身体活動性
COPD患者では身体活動性の低下が最大の予後不良因子と報告されている。当科では、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター、国立健康・栄養研究所と共同で、COPD患者のエネルギー消費に関する研究を行ってきた。佐藤らは、COPD患者のphysical activity levelがステージ2までは保たれており、6分間歩行距離と握力に相関することを報告した(2021 ERJ Open Res)。
画像解析
当科では放射線科と共同でシナプス・ビンセント(富士フィルム)を用いたCT解析を継続している。COPD患者では低吸収域、気道壁肥厚、体幹筋などの解析が重要であるが、白畑らは、COPD患者における腹直筋断面積が総エネルギー消費と身体活動性を最もよく反映すると報告した(2021 Respir Res)。また、公立千歳科学技術大学と共同で、KinectⓇ, RealSenseⓇを用いた非接触での呼吸運動解析を行い、新たな呼吸解析装置の開発を目指している。運動中の呼吸解析(呼吸数、1回換気量、分時換気量)については、リハビリテーション科と共同で、COPDおよび間質性肺疾患患者での解析を継続している。さらにコニカミノルタの動態画像システム(キノシス)を用いた間質性肺疾患の機能解析も行っている。仲村は2026年2月に日本画像医学会を主催予定である。
低出生体重関連閉塞性肺疾患
当科では、厚生労働科学研究(研究責任者:難波文彦)および日本呼吸器学会学術部会(形態機能、閉塞性肺疾患)研究である「出生体重と幼少期の環境・呼吸器疾患の成人期閉塞性換気障害への影響」を基盤研究機関として推進している。我が国における閉塞性肺疾患の原因となるearly life eventや喫煙以外の環境因子の関与の解明を目指す。
多職種連携呼吸リハビリテーション研究
上記の身体活動性や画像解析研究を踏まえ、COPD, 間質性肺疾患を含む「高齢慢性肺疾患患者のQOL向上を目的とした多職種連携包括的呼吸ケア・リハビリテーションの長期効果に関する研究」を開始した。医師、看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士が共同で、栄養、リハビリ、薬剤管理に加え、併存症、増悪予防、QOL維持など、総合的なケアを長期に行う。サルコペニアやフレイルの予防が大きな目標となる。仲村は2026年11月に日本呼吸ケア・リハビリテーション学会を主催予定である。
間質性肺疾患の臨床研究
当科では、間質性肺疾患の安定期の評価と急性増悪時の治療のための入院症例が多いため、過去10年間の間質性肺疾患による入院患者のデータベース作成を開始した。疾患の分類、BAL所見、安定期および増悪時の治療薬、治療反応性、予後などについての情報をまとめ、今後の診療と研究に生かしてゆく。
